2013年8月9日金曜日

猿賀石

話がやや前後しますが、以前、猿賀神社について書いた際に、調べものをしている過程で見逃した場所があることがわかったので、盛美園に行ったついでに猿賀神社にも寄ることにしました。

見逃したものというのは、猿賀石と呼ばれるものです。
これは猿賀神社について調べものをしている際に出てきたものですが、前に猿賀神社に行った時にはその存在を知らず、また境内からやや離れた場所にあったため、見ることができなかったのでありました。


猿賀石は鏡ヶ池と呼ばれる境内右手の大きな池のほとり、池に沿って盛美園方面に少し歩くと児童公園がありますが、その近くにありました。


猿賀石は旧猿賀字石林39番地から明治三十六年に移されたもので、石林の地名はこれに因んでつけられたものだといわれています。
この石については、『新撰陸奥国誌』に以下のような記述があります。

当郡金屋の権現平と云ふ処に大石あり神この石に腰を安す依て後人腰掛石と云ふこの石霊異ありいかなる大雪にもこの石上に積る事なし降るとも暫時に消散すと云ふ 其辺に小池あり神の田池と云ふ或時神天馬に乗し春流木に浮め流に儘て馬蹄蹤を点す猿賀石の馬蹄は神之れを蹈なり亦屣屐してこの石上に立ち策を以て之れを杖すこの故に猿賀石には蹄屐策の三印今現すこの猿賀石は神初て示現ありし深秘の鎮座なりと云り<中略>又都保石文を夷地の界とす聞く都保は南部にありこれは治国の神器猿賀石は夷匪を鎮圧するの神石たり

猿賀神社は坂上田村麻呂将軍が東夷征討の際、田道命の霊感を受けて大勝したことにより、大同二年(807)に建立されたと伝えられる神社ですが、それは伝説の域を出ないもので、本当の由来については詳らかではありません。
猿賀神社の信仰は、例えるならば岩木山信仰のように重層的で、調べても調べてもなかなか原初の信仰には行き届かないのではありますが、ただ、調べて行くうちに、ここも相当古くからの信仰の場だということはわかってきました。
上記の「新撰陸奥国誌」に「或時神天馬に乗し春流木に浮め流に儘て馬蹄蹤を点す」というくだりが出てきますが、一説によると猿賀神社の御祭神(田道命の神霊)は、はじめ鹿角郡猿賀野に鎮座していましたが、洪水があって、白馬に跨った姿で流木に乗り当地に流れ着いたといわれています。
そして、当地に流れ着いた田道命の神霊がおさまったのが、この猿賀石の上だというのです。

興味深いのは、猿賀神社にも岩木山神社にも洪水の伝説があることです。
また近くに製鉄遺跡があること、七日堂祭という神事があること、そして両社ともに修験道や密教の影響を受けていることも共通しています。
さらに猿賀石は坂上田村麻呂が夷賊の首領を討ち取り、その首を埋めたところだともいわれており、それに由来すると思われる鬼面奉射神事というものがあって、鬼にまつわる伝説があるというところまで共通しています。
たぶん、この二つの神社には何らかの関係があるのでしょう。
が、それについてはまだ調が及んでいないので書くことができません。

ところで、先に猿賀石は明治三十六年に現在地に移されたと書きましたが、当地には昔からこのような巨石が多かったといわれています。
その理由ははっきりしていませんが、猿賀周辺に先史時代の遺跡が数多くあり、また猿賀石には古代人がつけたと思われる磨痕が数か所あるということから、この石はもともと古代から上代にかけて先住民が信仰した磐座のようなものであっただろうと推測されているようです。
巨石信仰のあるところも、岩木山信仰に似ているところではあります。

ちなみに猿賀石の近くにはもう一つ、丑石と呼ばれる巨石があります。
どれが丑石かわからなかったので、近くにあった石を適当に撮りましたが、これじゃなかったらごめんなさい。


丑石の名は、牛が臥したような形をしていることに由来し、猿賀字明堂238番2号の丑盛から猿賀石と同じ年に現在地に移されといわれています。
案内板によると、「丑盛の周辺には新山本明寺熊野三所権現社があった事が古文献により明らかにされ丑盛は往古斎壇であった形跡がある」とのこと。
これも往古の巨石信仰を伝えるものでありましょうか。

丑石、猿賀石はともに有形文化財に指定されているそうです。
※案内板には有形文化財の記述がありますが、平川市のホームページの指定文化財一覧(http://www.city.hirakawa.lg.jp/docs/2010110900013/)には載っていませんでした(丑盛は市指定史跡として記載されています)。

あとは余談ですが、先月末に猿賀神社に行った時、鏡ヶ池の蓮の花が咲きかけていたので、そろそろ見頃を迎えているのではないかと思います。


ガマの穂などの雑草が繁茂して花の数が減り、今年は「北限に観る蓮の花まつり」を断念しなければならなかったほどだということですが、それを差し引いても、いいところには違いないので、お盆休みにでも行ってみてください。

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